Akatsuki Hackers Lab | 株式会社アカツキ(Akatsuki Inc.)

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リーン・スタートアップはもう古い?企業内新規事業でよみがえるLeanな事業立ち上げ <#01.走り出す前の準備>

こんにちは、ライブエクスペリエンス事業部のポリック (id: poric_ries) です。ひとり一人の人生の思い出を増やすために、おすすめのお出かけを提案するサービス「JOYMO(ジョイモ)」を作っています。

joymo.herokuapp.com

 

 僕らのチームでは、Running LeanやSPRINTなどのメソッドを実際に導入し、僕らなりにカスタマイズしながら、新サービスを立ち上げています。

 

前回#0で宣言した通り、”実践録”を順次配信していきます。 

hackerslab.aktsk.jp

 

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第1回のテーマは <走り出す前の準備> です。

 

 

0.アカツキ、ライブエクスペリエンス事業とは

JOYMOは、アカツキのライブエクスペリエンス事業内の取り組みなので、前段として簡単に会社と事業の紹介をします。

 

アカツキとは

「感情を報酬に発展する社会」の実現を目指し、主力であるモバイルゲーム事業に加え、リアルな体験を届けるライブエクスペリエンス事業をはじめとして、世界にワクワクとつながりをもたらす様々な事業を展開しています。

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●ライブエクスペリエンス事業とは

ライブ(生の、リアルな、ワクワクする)・エクスペリエンス(体験)の意味で、 厳選したアウトドアレジャー専門予約サイト「そとあそび」や遊び・体験予約サイト「Wowful(ワオフル)」の運営をはじめ、子会社「アカツキライブエンターテイメント」を通じてサバイバルゲーム事業やイベント事業等を展開しています。

 

 

1.新規事業の制約条件を整理する

企業内で新規事業を立ち上げる場合、組織なので当然ながら制約条件があります。

 

まず、新規事業の目的やゴール(期待値)、守るべきことを制約条件として整理します。これを予め経営とすり合わせておかないと、あとで大変です。実際僕らもここで一度躓きました。

 

本ブログでは、制約条件の中身というよりも整理の仕方の参考例として、僕らのチームのやり方を共有します。

 

僕らのチームでは、「ビジョナリー・カンパニー2」の”針鼠の概念と三つの円”に基づいて条件を設定しました。

 

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具体的には、次のように条件を言語化しています。 

 

[情熱を持って取り組めるものであること]

①次のミッションを実現できること
すべての人々に「やりたい!行きたい!」との幸せな出会いを提供し、人生の思い出を増やしていく。いつでもどこでも、それがすぐに叶う未来をつくる。
補足)ライブエクスペリエンス事業が掲げるミッションのひとつです。

②リーダー(私自身)が情熱を注げること

 

[自社が世界一になれるものであること]

③事業ドメイン
衣食住ではなく余暇(エンターテイメント)を主目的とした領域であること

 

[経済的原動力になるものであること]

④売上規模
数十億円〜百億円/年を目指せること
補足)ゲーム事業と両輪をなすための目線感です。

⑤ビジネスモデル
CtoCモデルを採用すること

 

 

2.メンバーを集める

「スタートアップとは、とてつもなく不確実な状態で新しい製品やサービスを作り出さなければならない人的組織である 」(by Eric Ries)

 

アイディアよりプロダクトより何よりまずチームが最も重要だと信じています。今回のチーム編成では、次に2つを判断軸にアカツキ社内でリクルーティングし、メンバーを集めました。

 

①プロダクトを作る最小単位のチームであること
ディレクター、デザイナー、フロントエンドエンジニア、サーバーサイドエンジニアを入れた5名チームを編成


②100%コトに向き合えるチームであること
必要以上に人に対して気を遣わず、率直な物言いができる(その前提となる信頼関係を築けている)メンバーでチームを編成

 

 

●ここだけは譲らない

今回のチーム編成は私が全てを決めることができました。企業内新規事業では非常に珍しいことだと思いますが、それでも敢えて言えば、他のどんな裁量を譲ったとしてもここだけは死守すべきだと感じています。

 

 

 

3.新規事業開発プロセスの方針を決める

●規律あるチャレンジ

アカツキでは、新規のゲームやサービス開発の失敗からの学びとして、”規律あるチャレンジ”を重視しています。規律(制約)があるからこそ創意工夫を繰り返し、その結果としてイノベーションが生まれると信じています。

 

僕らのチームでは、これを実践に落とすために、次に2つのメソッドを採用しています。

 

メソッド1.LEANに進める

LEANな進め方、つまり、

ビジネスプランの重要な部分から、
順番に仮説検証し、
その学びを生かして柔軟にプランを変えながら、
成功に近づいていくプロセス

を採用して進めています。

 

前提知識として「アントレプレナーの教科書」「リーン・スタートアップ」を 共通言語にした上で(ここは4.で後述します)、実践面では「Running Lean」をメインの教科書としています。

Running Lean ―実践リーンスタートアップ (THE LEAN SERIES)

Running Lean ―実践リーンスタートアップ (THE LEAN SERIES)

 

具体的には、リーンキャンバスを用いてプランの要素を言語化したり、その優先順位にしたがって仮説検証したり、ユーザーインタビューの質問項目に本の内容を取り入れるといった形で最大限活用しています。

 

 

メソッド2.SPRINTで回す

「Running Lean」は、体系的なプロセスをわかりやすく整理しているものの、実際の現場の回し方はイメージしにくいものです。そこで、日々の進め方のメソッドとして採用したのが「SPRINT」です。 

 

SPRINTは、Google Venturesが推奨する

アイディア創出からその検証までを高速で行ない、短時間でアウトプットを出す

フレームワークです。

SPRINT 最速仕事術――あらゆる仕事がうまくいく最も合理的な方法

SPRINT 最速仕事術――あらゆる仕事がうまくいく最も合理的な方法

 

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この2つのメソッドの根幹にある思想は次の3つです。

  • 最も重要なことに集中する
  • 問いを立てて、検証して、答えを出す(学ぶ)
  • 最小最速で取り組む

ここが共通しているからこそ、異なるメソッドながら組み合わせて活用することができます。

 

 

4.脳内一致の土壌を作る

僕らのチームは5名ながら、職種はもちろんキャリアも全く異なるため、使う言葉やその定義、価値観が違います。

チームで相乗効果を発揮するためには、全員の脳内を常に一致させ、各々の自由なアイディアや意見をぶつけ合って高め合うことが何より重要です。 

 

●必読書

この土壌を作るために、次の5冊を必読書に定め、チーム全員で同じインプットをしました。 

 

ステップ1.前提知識を叩き込み、共通の価値観で、同じ言葉を使う。

アントレプレナーの教科書[新装版]

アントレプレナーの教科書[新装版]

 

 

リーン・スタートアップ

リーン・スタートアップ

 

 

ステップ2.新規事業開発プロセスを理解する。 

 
ステップ3.企画初期に重要なユーザーインタビュー方法を学ぶ。
リーン顧客開発 ―「売れないリスク」を極小化する技術 (THE LEAN SERIES)

リーン顧客開発 ―「売れないリスク」を極小化する技術 (THE LEAN SERIES)

 

 

 

なによりもまず読むべきは「アントレプレナーの教科書」冒頭60ページ!

顧客がいるかどうかの確認もせず、莫大な資金と貴重な時間を費やして大失敗するプロジェクトの物語を反面教師とし、LEANの思想をベースにムダのないプロセスを第一とする価値観を全員ですり合わせました。

 

 

5.環境(というか座席)を作る

アカツキは、目黒の新築ビルに入居しています。
カラフルでオシャレな内装で、植物もあり、すごく開放的な空間で働いています。

https://aktsk.jp/images/recruit/album/images_02.jpg

 

一方、僕らのチームは、通称精神と時の部屋と名付けた、狭く閉鎖的な部屋に”あえて”席を設けました。

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●「精神と時の部屋」の狙い

  1. 距離が近く、密なコミュニケーションがとれる
  2. 他のチームから切り離され、自由にアイディアや意見を出せる
  3. なんだかベンチャー感がある 

実際やってみて一番重要だと感じたのは”2”です。
傍から聞くと馬鹿げた発言も、実はブレイクスルーのきっかけになることはよくあることですが、思いついたことを”率直に発信できる心理状態を保つ”のは結構難しく、意識的/無意識的にチーム外の人を反応を気にしてしまう環境はチームにとってネガティブに働きます。心理的安全な環境を物理的に作り出す工夫が必要です。

 

 

以上、今回は走り出す前の準備として、事業と組織(チーム)両面で事前に整えておくべきことをお話しました。

 

いかがでしたか?

 

次回は「#2.とりあえず走ってみる!Running Lean&SPRINTを実践してみた」です。僕らのチームが最初に取り組んだ”ファミリー層の課題”について、具体的にどんな課題設定をして、どう検証したか、時系列に沿い実際の風景やプロトタイプも見せながら共有します。お楽しみに!


「完璧を目指すよりまず終わらせろ!」by Mark Elliot Zuckerberg@Facebook