Akatsuki Hackers Lab | 株式会社アカツキ(Akatsuki Inc.)

Akatsuki Hackers Labは株式会社アカツキが運営しています。

スクラムトレーニングで自律型チームを実現する

はじめに

アカツキでは開発にスクラムの要素を取り入れています。しかし、現状の開発のやり方に漠然とした不安がありました。その不安とは、例えば、もっと効率的になるんじゃないか、もっと良いやり方があるんじゃないか、このやり方はスケールしないのではないか、等といったことです。そこで第三者の目が必要だろうと、ryuzeeさんにアドバイスしていただくことになりました。

メンバーヒアリングからスクラムトレーニング実施へ

まず現状をryuzeeさんに知っていただく必要がありました。そこで、アカツキの全メンバーを対象に、開発上困っていることを何でも相談出来る、アジャイル開発お悩み相談会を実施しました。また、一つのプロジェクトの振り返り(KPT: Keep Problem Try)にも参加していただき、観察していただきました。様々なプロジェクトから約20名ぐらい個別相談させていただいたり、KPTに参加していただいたたりした結果、以下の課題が浮き彫りになりました。

  1. スクラムとは何かをほとんどのチームメンバーが理解しきれていない
  2. スクラムのプラクティスをなぜ実施するかを、スクラムマスターが説明しきれていない
  3. スクラムマスターとプロダクトオーナーが明確でない

上記を解決するためには、例えば、スクラムを理解した人が社内で教えてまわるといった方法があげられます。しかし、現状はその工数を中々捻出出来ないといった課題がありました。そこで、スクラムトレーニングを一つのプロジェクトで実施し、その成功体験・プラクティスを横展開していくのが良いのではないかと考え、ryuzeeさんにスクラムトレーニングを実施していただきました。 scrum_desk

スクラムトレーニングでやったこと

スクラムトレーニングでやった内容そのものは非常にシンプルなものでしたが、約3時間かけて以下の実習をじっくり行いました。トレーニング中は常時明るい雰囲気で、スクラムに関する質問が飛び交うなど、参加者全員が楽しんでいる様子だったのが印象的でした。

スクラム体験1(紙飛行機製作)

これは紙飛行機の製作を通じてスクラムの本質を理解しようという試みです。以下のように進めていきました。

  • 5~6人のチームに別れる
  • あるルールにそった紙飛行機をチーム対抗で製作
  • 紙飛行機の製作工程をスプリントに見立てる(プランニング->紙飛行機製作->振り返り)
  • スプリントを4回実施する
  • 紙飛行機製作を通じた振り返り

結果は、こちらの写真の通りですが、予測/結果が合っているチームがあれば、全然異なった結果になっているチームもあり、なかなか面白いですね。 score_board scrum_paper_plane

スクラム基礎の座学

これはスクラムの基礎知識を学ぶ講義でした。大体のことはこちらのスクラムガイドを参考にしてください。

スクラム体験2(ボールタッチゲーム)

これは最後少し余った時間で実施しました。やったことは、参加者全員(約20名)の名前の順に、ボールを出来るだけ早く触れるアクティビティです。これもスクラムトレーニングなので、計画->実行->振り返りを1スプリントとして、3回実施しました。最初は5分かかったのですが、3回目の挑戦では3秒という短い時間でこのミッションを達成出来ました。これを読んでいる方はどうやったか想像出来るでしょうか?

スクラムトレーニングを受けたメンバーの気付き・学び

スクラムトレーニングを受けたメンバーに気付き・学びのアンケートを実施しました。そのアンケートの中で、特に多かった声をご紹介します。

暗黙の制約に縛られてはいけない

既に述べた通り、スクラムトレーニングの紙飛行機制作にはルールがありました。このルールを制約と捉えるのか、規約と捉えるのかで大きく違ってくるというエピソードがありました。ルールに沿った紙飛行機の生産量を比較したとき、チームAは10機以上制作出来るのに、チームBは1機しか製作出来ませんでした。この状態が何回か繰り返されたとき、ryuzeeさんが一言「他のチームの制作した紙飛行機を分析してはいけないというルールは無いですよ。」とアドバイスしました。全てのチームに共通していたことですが、チームで1から設計したものでないと紙飛行機製作とは言えない、と暗黙の制約を自分たちに課していたのです。その後、チームBはチームAの紙飛行機を徹底的に分析して、劇的に改善して最終的には7機製作(7倍の効果)していました。 普段の業務をする上でも、暗黙の制約を課していないかを常に考える必要がある、そうでないとイノベーションを起こす機会を失っているかもしれないという大きな気付きがありました。 scrum_wideview

計画・振り返りの重要性

紙飛行機製作のトレーニングで、スプリントを重ねる度にほとんどのチームで製作数が増加するという結果が出ました。具体的には最初は4機だったチームが、4回目のスプリントでは10機作れていました。1スプリントは5分でしたが、20分間ただ作り続けた場合と比較した場合、同じ結果が得られたかというとそれは厳しかったかなと思います。例えば、私のいたチームの場合は、

  1. 最初のスプリントで全員がどう作ればいいかわからない状態でスタートする(1機製作)
  2. 次のスプリントの計画で良い紙飛行機の製作方法を共有する(4機製作)
  3. さらにその次のスプリントで役割を明確にする(11機製作)

と、明らかに5分ごとに改善されていきました。これは、計画・振り返りを何度も繰り返すことで、個人主義的な開発からチーム主義的な開発へとシフトしていったからだと思います。ここから、自己改善のできるチームが目指すチームの姿だよね、という共通認識が出来ました。

スクラムトレーニングを受けてから変わったこと

一言で述べるならば、誰かに管理されて動くのではなく、自主的に動ける自律型チームになりつつあります。結果として、メンバーのプロダクトに対する責任感が高まり、マネージメント工数が劇的に下がりました。ここでは、変わったことを2つ紹介します。

自主的にカンバンを取り入れた

スクラムトレーニングにて、朝会がもしただの進捗報告になっているのであれば、カンバンを取り入れてみるのも一つの手であると、アドバイスをいただきました。後日、カンバンを取り入れようという声がメンバーから上がり、チーム全体でタスクを見える化するようになりました。最初は付箋紙をいちいち作るのは面倒だという声もありましたが、数日続けてみた結果、それまでただの進捗報告だった朝会が、お互いの進捗を確認しあって困っていることを共有する場になりました。

自主的に課題解決の場を設けるようになった

問題が発生した際に、チームで自発的に集まって振り返りや解決方法を考えるようになりました。これまではなんとなく放置されていた問題があったり、チーム全体で実施するKPTでだけ振り返りをしていたので、大きな変化ですね。

まとめ・今後の展望

スクラムトレーニングをメンバーが受講したことで、自律型チームの種はまけたかなと思っております。ただし、これからもより良いチームにするためには、常にチームはどうあるべきかを自分たちで考え、自分たちで良くしていくしか方法は無いと思っています。そのためには、誰かの力を借りずともスクラムトレーニングを自分たちで出来るぐらい、スクラムのことをより深く知る必要があると思っています。

まだまだ改善出来るところがあるということは、伸びしろがあるということなのでワクワクしますね!!